東大合格者ランキング上位校で東大離れ?
8月に実施された「第1回東大入試実戦模試(駿台)」の学校別受験者数を見ていて違和感がありました。
全体的に数が小さい気がしました。
そこで昨年度のデータと比較してみました。以下の表の通りです。
高校名 | 2022年 | 2021年 | 昨年比 |
---|---|---|---|
開成 | 394 | 461 | -67 |
日比谷 | 252 | 286 | -34 |
西大和学園 | 212 | 225 | -13 |
麻布 | 202 | 238 | -36 |
駒場東邦 | 197 | 200 | -3 |
桜蔭 | 195 | 214 | -19 |
ラ・サール | 195 | 218 | -23 |
筑波大附属駒場 | 188 | 201 | -13 |
聖光学院 | 178 | 160 | 18 |
渋谷教育学園幕張 | 177 | 216 | -39 |
横浜翠嵐 | 159 | 187 | -28 |
海城 | 158 | 179 | -21 |
灘 | 155 | 173 | -18 |
浦和 | 153 | 141 | 12 |
栄光学園 | 122 | 134 | -12 |
筑波大附属 | 118 | 145 | -27 |
浅野 | 113 | 114 | -1 |
栄東 | 110 | 103 | 7 |
渋谷教育学園渋谷 | 110 | 118 | -8 |
東京学芸大附属 | 100 | 148 | -48 |
総受験者数は2022年が11459名、2021年が11991名で微減です。
上位20校に関してですが、昨年から増えているのは聖光学院、浦和、栄東の3校だけで、軒並み減少しています。
夏の東大模試なので、東大志望でない人が練習で受けているような場合もあり、誤差はあります。
それでも、こんなに減っているとは驚きました。
上位校での「東大離れ」が進んでいるとしたら、それ以外の高校の人にとっては東大合格を取りやすくなる年になります。
日比谷や横浜翠嵐のような近年東大合格者を急増させた公立高校はピークを迎えてしまったのでしょうか。。。
一方で聖光学院はまだまだ勢いがありそうです。
昨年の東大合格者ランキングトップ10は
第1位 開成 193名
第2位 筑波大附属駒場 96名
第3位 灘 92名
第4位 聖光学院 91名
第5位 西大和学園 79名
第6位 桜蔭 77名
第7位 渋谷教育学園幕張 74名
第8位 日比谷 65名
第9位 麻布 64名
第10位 駒場東邦 60名
でした。
聖光学院がトップ3に入るのか、公立高校がトップ10に残るのかあたりが見どころになるでしょう。
秋に実施される2回目の東大模試になると、受験者数が大きく増減する場合もあるので、引き続き注視していきます。
過去の記事もご覧ください。
2022年東大合格者数ランキング(11位~20位)速報値を見た雑感
2022年3月10日(木)に東大入試の合格発表があり、各高校から何人の合格者がいるのか、集計が始まっています。
速報値ですが、ランキングを見た感想を書いていきます。今回は11位~20位を取り上げます。
以下のwebページを参考にしています。
第11位 海城高校 57名
昨年に引き続き、推薦で2名合格。
第12位 神奈川県立横浜翠嵐高校 52名
14→21→26→50→52と推移している。
理三も2名。公立高校から理三複数名は珍しい。
第13位 久留米大学附設高校 43名
理三4名!トップ10には入らないが、安定的に理三を輩出する高校。
第14位 筑波大学附属高校 42名
昨年の29名から復活。理三も0名から3名へ。
第15位 渋谷教育学園渋谷高校 38名
推薦で3名!
昨年に引き続き、理三は0名。
第16位 ラ・サール高校 37名
理三3名。トップ10には戻らないが、理三には強い。
第17位 浅野高校 36名
今年は理三2名(昨年は0名)。
第18位 早稲田高校 29名
理三を安定的に輩出していたイメージが強かったが、今年は0名。
第19位 埼玉県立浦和高校 27名
22→41→33→46→27と推移している。
昨年から大幅減。
第19位 東京学芸大学附属高校 27名
現役合格者13名…
ついに1桁も見えてきた…
ここが減った分、横浜翠嵐が増加?
※発表されていない学校もありますし、集計が進むにつれて多少数字が変わることもあります。
〈おまけ〉
前回に引き続き、古い東大合格者数ランキングを見てみます。まずは1982年です。
第1位 開成 134名
第2位 灘 121名
第3位 麻布 115名
第4位 ラ・サール 104名
第5位 東京学芸大附属 103名
第6位 筑波大附属駒場 93名
第7位 栄光学園 61名
第8位 筑波大附属 60名
第8位 武蔵 60名
第10位 県立浦和 54名
100名を超える学校が5つもあるのは、今では信じられない。
次に、1972年のランキングです。
第1位 灘 115名
第2位 東京教育大附属 97名
第3位 東京教育大附属駒場 84名
第3位 東京学芸大附属 84名
第5位 都立戸山 81名
第6位 開成 80名
第6位 都立西 80名
第8位 県立湘南 78名
第9位 麻布 77名
第10位 ラ・サール 74名
※東京教育大附属:現 筑波大附属
国立大附属高校の全盛期。
東大合格者数ランキング関連では、少し古いですが、こちらの本が詳しくて面白いです。
興味があれば、過去の記事もご覧ください。
2022年東大合格者数ランキング(1位~10位)速報値を見た雑感
2022年3月10日(木)に東大入試の合格発表があり、各高校から何人の合格者がいるのか、集計が始まっています。
速報値ですが、ランキングを見た感想を書いていきます。今回は1位~10位を取り上げます。
以下のwebページを参考にしています。
第1位 開成高校 192名
昨年の144名から大幅に復活。
直近5年間で、175→187→181→144→192と推移し、41年連続1位です!
第2位 灘高校 92名
理三10名で現時点で桜蔭(13名)に負けている。これは珍しい。
文科二類はたったの2名。灘の中で敬遠されている?
第3位 聖光学院高校 91名
62→79→91と推移し、爆発的に増加。
ライバルは栄光学園ではなく、灘になった。
ただし、聖光は理科三類0名。
第4位 西大和学園高校 79名
16→21→17→28→32→35→30→42→53→76→79と推移し、トップ10の常連入り。
京大にも40名合格。
100名を超えるところまで伸びそう。
第5位 桜蔭高校 77名
理科三類13名で、トップか(筑駒未発表)。
文科二類が6名で少ない。灘と似たような傾向。
第6位 渋谷教育学園幕張高校 74名
このあたりで安定してきた。トップ10の常連。
第7位 都立日比谷高校 65名
47→40→63→65と推移している。
昨年が偶然の増加でなくよかった。
第8位 麻布高校 62名
88→94→78→98→100→66→86→62と推移している。
緩やかに減少?
そろそろトップ10から外れそう?
第9位 駒場東邦高校 60名
51→47→61→62→56→60と推移している。
40台には戻らず、復帰。
第10位 栄光学園高校 58名
聖光学院に突き放されてしまった。
横浜翠嵐が52名で、神奈川県ナンバー2も怪しくなっている。
※発表されていない学校もありますし、集計が進むにつれて多少数字が変わることもあります。
〈おまけ〉
20年前(2002年)の東大合格者数ランキングは以下のようになっています。
第1位 開成 164名
第2位 麻布 94名
第2位 灘 94名
第4位 東京学芸大附属 87名
第5位 筑波大附属駒場 79名
第6位 ラ・サール 78名
第7位 桜蔭 74名
第8位 巣鴨 63名
第9位 駒場東邦 62名
第10位 海城 53名
残念ながら、ラ・サール、東京学芸大附属、巣鴨は凋落してしまいました。
ちなみに当時の神奈川御三家は
第11位 桐蔭学園 49名
第12位 栄光学園 48名
第14位 聖光学院 43名
となっていて、ここからの聖光学院の伸びは凄まじいです。
さらに10年前、1992年のランキングはこんな感じです。
第1位 開成 201名
第2位 麻布 126名
第3位 桐蔭学園 114名
第4位 灘 105名
第5位 東京学芸大附属 95名
第6位 武蔵85名
第7位 筑波大附属駒場 81名
第7位 ラ・サール 81名
第9位 巣鴨78名
第10位 栄光学園74名
公立高校はゼロ。
11位以下の学校も次回取り上げる予定です。
東大合格者数ランキング関連では、少し古いですが、こちらの本が詳しくて面白いです。
興味があれば、過去の記事もご覧ください。
多和田葉子『雲をつかむ話』を読んでみる
2022年京都大学 国語(理系)第2問は、多和田葉子『雲をつかむ話』からの出題でした。
そして、2022年東京大学 英語 2(B)は次のような問題でした。
以下の下線部を英訳せよ。
旅人は遠い町にたどりつき、街路樹が家並み、ショーウインドウの中の商品や市場に並べられた野菜や美術館に飾られた絵画を眺めて歩き、驚き、感心し、時には不安を覚える。旅人は、その町に長年住んでいる人たちよりもずっとたくさんのものを意識的に見るだろう。しかし、いくら大量の情報を目で吸収しても旅人はあくまで「よそ者」、あるいは「お客様」のままだ。外部に立っているからこそ見えるものがあるのだから、それはそれでいいのだが、わたしなどは、もし自分が旅人ではなく現地人だったらこの町はどんな風に見えるのだろう、と考えることも多い。
(多和田葉子『溶ける街 透ける路』)
東大も多和田葉子の作品から出題しています。
多和田葉子は、村上春樹と並んで、ノーベル文学賞の候補に挙がる人ですが、これまで作品を1冊も読んだことがありませんでした。
東大と京大で同時に出題されているこの機会を逃すと、一生読まないかもしれないので、まずは1冊読んでみることにしました。
早速、京大で出題されていた「雲をつかむ話」を購入しました。
とりあえず、1章を読んでみましたが、以下の文章が印象的でした。
日本語を学ぶ外国人がひらがなの「あ」を練習する場面です。
自分の書いた『あ』の字を見て、思わず笑ってしまった遥香の頬の独特の緩め方を思い出しました。それにしても一番初めの文字がこんなに難しいというのはいくらなんでも無茶だ。まず十字架を書けというのは、信仰の薄い自分でさえ受け入れることができました。でもその十字架にからみつく蛇がややこしすぎる。あ! 蛇のうねりは激しく、十字架の下の方が少しゆがんでいる。遥香ちゃんは蛇の誘いに乗ったらどういうことになるのか分かっていないみたいな澄ました顔をして、『あ』の字の練習をさせる。
個人的に、このような外国語に翻訳するのが難しい日本語が好きなのですが、まさにそのような文章でした。
ひらがなを知っているからこそ、腑に落ちる文章です。
内容が面白いのは当然として、日本語の文章も流麗で興味深いです。
京都大学が選ぶのも納得です。
過去の記事もご覧ください。
2022年東大国語で出典になった本
本日実施された2022年東大入試で題材となった本を紹介します。
第1問は
からの出題でした。
東大の現代文では
・「~」とはどういうことか、説明せよ
・「~」とあるが、なぜそういえるのか、説明せよ
の2パターンの問いが設定されます。
2022年 第1問は、すべて「~」とはどういうことか、説明せよ のパターンでした。
(例年は、2つのパターンが混ざっています)
「~」とはどういうことか、説明せよ のみで構成されているのは、2000年(現在の出題形式になった年)以降では
2021年、2019年、2016年、2009年
に限られました。
近年特に目立ちます。何か事情や意図があるのか気になります。
第4問は
武満徹「影絵の鏡」
からの出題でした。
『樹の鏡、草原の鏡』(新潮社)に収録されています。
「影絵」はワヤンクリットと読み、インドネシアの伝統芸能の影絵芝居を指します。
興味があれば、過去の記事もご覧ください。
小田急ロマンスカーVSEで通勤
小田急ロマンスカーVSEが2022年3月11日をもって定期運行を終了してしまいます。
定期運行終了直前ということで、VSEで通勤してきました。
はこね21号で新宿から町田までです。
感謝をこめて!
VSE ♡ Special Thanks & Forever!
という記念装飾が掲出されていました。
せっかくなので、「小田急ロマンスカー・VSE(50000形)定期運行終了記念乗車券・入場券」も購入しました。
ロマンスカーはこね号は次のダイヤ改正で大幅に減便となります。
平日は「45本→30本」、土休日は「51本→39本」です。
いつロマンスカーに乗っても空席が目立つので、当然の対処でしょうか。。。
時間帯によっては、1車両に1人いるかどうかくらいの乗車率です。。。
過去の記事もご覧ください。
100分de名著2022年1月号「金子みすゞ詩集」に見覚えのある詩がありましたー「大漁」「積もった雪」
NHKテキストに「100分de名著」というシリーズがあります。
誰もが一度は読みたいと思いながら、なかなか手に取ることができない古今東西の「名著」を、25分×4回=100分で読み解く番組です
とwebページでは紹介されています。
テレビ番組ではありますが、テキストがしっかりとしているので、本だけでも十分に楽しめます。
2019年度から読み始めたのですが、予想以上に質が高く、それから毎月購読しています。
(たしか、東海道線のグリーン車で読んでいる人がいて、そこで存在を知りました)
読書はしたいけど何を読んだらよいかわからない人に特にオススメです。
もちろん、すでに読書が好きで、たくさんの本を日々読んでいる人にも役立ちます。
自分で本を買うと、著者やジャンルが偏ってしまうことがあります。100分de名著を購読することにより、毎月読むべき本を強制的に指定されるので、普段は触れない本に出会うことができます。偏りを少なくすることができるのです。
2022年1月は「金子みすゞ詩集」が題材でした。
一番はじめに紹介されている詩が「大漁」でした。
切手にもなっている大変有名な詩です。
この「大漁」という詩ですが、どこがで見たことがあると引っ掛かりました。
実は東大入試で出題されているのです。
1985年の国語(第2問)で題材となっています。
この問題では、「大漁」と「積もった雪」が取り上げられています。
(「積もった雪」は100分de名著にも後ほど登場します)
東大の問題を引用します。
次の二つの詩は同じ作者の作品である。二つの詩に共通している作者の見方・感じ方について、各自の感想を160字以上200字以内で記せ。(句読点も一字として数える。)
積もった雪
上の雪
さむかろな。
つめたい月がさしていて。
下の雪
重かろな。
何百人ものせていて。
中の雪
さみしかろな。
空も地面のみえないで。
大漁
朝焼け小焼けだ
大漁だ
大羽鰯の
大漁だ
浜は祭りの
ようだけど
海のなかでは
何万の
鰯のとむらい
するだろう。
それ以前は「金子みすゞ」の名は世の中でほとんど知られていなかったようです。
1985年に入試問題として出題している東大はさすがです。
東大は世の中の流行を真っ先に入試問題に反映させる大学のひとつです。
このあたりの事情は、竹内康浩『東大入試至高の国語「第二問」』(朝日新聞出版)に詳しく書かれています。
この本は金子みすゞの話以外にも、非常に面白い話が書かれています。
興味がある人は読んでみてください。
(まだ絶版になっていないようですが、絶版になったら高値がつきそうな1冊です)
念のためですが、現在の東大入試の対策にはなりません…
趣味として読むタイプの本です。
過去の記事もご覧ください。