受験生版「7つの習慣」
スティーブン・R・コヴィー『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版)という本があります。
英語版はStephen R. Covey "The 7 Habits Of Highly Effective People"です。
大人には有名な本で、読破していなくても、1度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
日々をより良くするための「7つの習慣」について解説している本です。
本書では、イソップ寓話「ガチョウと黄金の卵」の話を用いて、その大切さを説明しています。一読しておきたい話なので、引用させていただきます。
貧しい農夫がある日、飼っていたガチョウの巣の中にキラキラと輝く黄金の卵を見つけた。
最初は誰かのいたずらに違いないと思い、捨てようとしたが、思い直して市場に持っていくことにした。
すると卵は本物の純金だった。
農夫はこの幸運が信じられなかった。
翌日も同じことが起き、ますます驚いた。
農夫は、来る日も来る日も目を覚ますと巣に走っていき、黄金の卵を見つけた。
彼は大金持ちになった。まるで夢のようだった。
しかしそのうち欲が出て、せっかちになっていた。
一日一個しか手に入らないのがじれったく、ガチョウを殺して腹の中にある卵を全部一度に手に入れようとした。
ところが腹をさいてみると空っぽだった。黄金の卵は一つもなかった。
しかも黄金の卵を生むガチョウを殺してしまったのだから、もう二度と卵は手に入ることはなかった。
「黄金の卵」(≒成果)と「ガチョウ」(≒成果を生み出すための能力)の2つをバランスよく考えていくことが重要であるということです。
そのために、何をどのようにすべきなのか、をまとめたのが「7つの習慣」です。
それが以下の7つです。
・第1の習慣:主体的である
・第2の習慣:終わりを思い描くことから始める
・第3の習慣:最優先事項を優先する
・第4の習慣:Win-Winを考える
・第5の習慣:まず理解に徹し、そして理解される
・第6の習慣:シナジーを創り出す(相乗効果を発揮する)
・第7の習慣:刃を研ぐ
参考のために載せておくと、英語では
・Habit 1:Be Proactive
・Habit 2:Begin with the End in Mind
・Habit 3:Put First Things First
・Habit 4:Think Win/Win
・Habit 5:Seek First to Understand, Then to Be Understood
・Habit 6:Synergize
・Habit 7:Sharpen the Saw
となっています。
これは大人にも役に立ちますが、むしろ受験生にとって有益だと感じたので、受験生向けにアレンジしてみます。
・第1の習慣:主体的である
これは受験生にとって、最も大切でしょう。
①:受験したい学校は自分で決めた。そこに合格するために何をしたら良いのかをインターネットで調べたが、確信が持てなかったので、信頼できる予備校の先生に質問にいった。
②:親に言われた学校をとりあえず受験してみることにした。何をしたら良いのかわからないが、学校で与えられた宿題だけはやっている。
この2人の受験生を比べて見たら、一目瞭然、①の方が合格する気がしますね。
自分で考える、さらにそれを行動に移す、これが合格には必要です。もちろん、失敗することもあるかもしれませんが、そこから得られる経験値も合格を後押ししてくれます。
・第2の習慣:終わりを思い描くことから始める
受験生にとっての「終わり」とは何でしょうか。それは2つあります。1つ目は「志望校」、2つ目は「将来の夢」です。
行きたい学校が定まらなければ、日々何を勉強するのかも決まりません。
志望校の情報を調べて、「必要な科目、出題範囲」、「科目ごとの配点」、「合格者最低点、合格者平均点、合格者最高点」は最低限知っておくべきでしょう。
また、過去問を見て、どのような勉強するべきかも把握しましょう。
また、「将来の夢」も大切です。「将来の夢」が決まると「志望校」も決まるからです。
注意してほしいのは、「将来の夢」というのは、職業である必要はありません。「医師になりたい」「官僚になりたい」というのも将来の夢ですし、「お金持ちになりたい」「できるだけ働かないで生きていきたい」「◯◯に住みたい」というのも将来の夢です。
どこの学校に行けば、これらの実現確率が高くなるのか、そこから志望校を決めても良いのです。
・第3の習慣:最優先事項を優先する
受験生の「最優先事項」は間違いなく「志望校合格」です。すべてが志望校合格に繋がるように生きていく必要があります。
時間はすべての受験生に平等に与えられています。その時間をいかに使うかがカギとなります。
「緊急度」と「重要度」を軸にしてやるべきことを考えましょう。「7つの習慣」では、4つの領域に分けています。
第1領域:緊急であり重要である活動
(例) 明日が期限である塾の宿題
第2領域:緊急ではないが重要である活動
(例) 計算力をつける計算練習、教養を深める読書、体調管理
第3領域:緊急であるが重要ではない活動
(例) 友達への返信、SNSのチェック
第4領域:緊急でなく重要でない活動
(例) 有意義でない遊び、表面上の付き合い
この中で最も重視したいのが「第2領域」です。「第1領域」のことは受動的にでも勝手にやるはずです。
「第3領域」「第4領域」をいかになくして、「第2領域」に時間を割けるかが合格を勝ち取れるかどうかを決めます。
「現在は行っていないが、もし日頃から行っていれば、自分の志望校合格をもたらすと思うこと」を挙げてみましょう。それを実行すれば、効果的な勉強ができるのです。
・第4の習慣:Win-Winを考える
自分の合格(Win)は当然考えるはずですが、他者の合格(Win)を考えることも大切です。
例えば、友達に勉強を教える。これは有効な勉強のひとつです。教えた相手の学力も上がり、それ以上に自分の学力も上がります。
他人に教えようとすると、必然的に深い理解が求められますし、頭にも残りやすくなります。
(ただし、足を引っ張りあうような関係は即座に解消しましょう。嘘を教えたり、「これは分からなくても大丈夫だよ」とごまかしたりする人にはならないように。また、そういう人と一緒に勉強しないようにすることを推奨します。)
・第5の習慣:まず理解に徹し、そして理解される
「親」や「先生」を相手にすることを考えてみましょう。
よくあることですが、自分の行きたい学校を親が認めてくれないというケースがあります。
「私は慶應に行きたいのに、親は東大を受けろと言う」というような場合です。
単に「東大は受けない。慶應に行きたい」と主張しても親は納得しないはずです。
まずは「なぜ、東大に行ってほしいのか」を聞きましょう。そしてそれを理解しましょう。そうすることで、親もこちらの話を聞く姿勢になってくれるでしょう。
その上で、自分の意見を伝えてみるのです。敵対関係でいても、話は進まないのです。
受験生の側が、一歩大人になってみるのです。
(本心を言えば、そのような親や先生はレベルの低すぎる大人です。ただし、現実問題として、このような大人も存在しているのです。運悪く、自分の周りにいる場合は、相手を理解し、うまくやり過ごし、無駄な時間を使わないようにすることが大切です。そういう大人に限って、自分を理解されることが大好きなので、うまくいくはずです。学校や塾の先生であれば、関わらないようにするのも解決策のひとつです。)
・第6の習慣:シナジーを創り出す(相乗効果を発揮する)
「3科目しか勉強していない受験生」より、「7科目勉強している受験生」の方が成績が良いということがしばしばあります。
どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?その1つの要因が「相乗効果」です。
数学で勉強した考え方を、英語や現代文の問題を解くときに活用することができます。
例えば、多田正行『思考訓練の場としての英文解釈』(育文社)では、因数分解の考え方を英文和訳に使っています。
理科を勉強していると、科学をテーマとした文章が読みやすくなります。
受験勉強が各科目で完結するわけではないのです。
「時間制限がある中で問題を解く」「論述の答案を作成する」というような科目横断的な力もあります。
幅広く勉強することで、効率よく能力を上げることができるのです。
・第7の習慣:刃を研ぐ
木をノコギリで切るときに、途中で刃を研いだ方が効率的に進めることができる、という話です。
切れの悪いノコギリで頑張り続けるのは、良くないことです。
「第3の習慣」の話で登場した「第2領域:緊急ではないが重要である活動」に入るのが「刃を研ぐ」という活動です。
計算スピードが遅いまま、問題集を進めるよりも、計算スピードを向上させてから、問題集を進める方が効率が良くなるということです。
速読をできるようにして、読むスピードを上げると、全科目の勉強効率が大幅にアップします。
余談ですが、SEGという塾には「速読による能力訓練」という講座があり、非常にオススメです。
SEGに通えないという人は以下の本で同等な内容を学ぶことができます。
「計算力」や「速読」のような科目横断的な能力アップを図ることが非常に重要なのです。
日々の勉強の参考にしてみてください。
過去の記事もご覧ください。