受験百景(予備校講師のブログ)

「受験」や「入試問題」に関係する話、日々の雑感を様々な視点から書きます。備忘録も兼ねていますので、くだらない話もあるかもしれません。

100分de名著2022年1月号「金子みすゞ詩集」に見覚えのある詩がありましたー「大漁」「積もった雪」

 

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NHKテキストに「100分de名著」というシリーズがあります。

 

誰もが一度は読みたいと思いながら、なかなか手に取ることができない古今東西の「名著」を、25分×4回=100分で読み解く番組です

 

とwebページでは紹介されています。

 

テレビ番組ではありますが、テキストがしっかりとしているので、本だけでも十分に楽しめます。

 

2019年度から読み始めたのですが、予想以上に質が高く、それから毎月購読しています。

(たしか、東海道線グリーン車で読んでいる人がいて、そこで存在を知りました)

 

読書はしたいけど何を読んだらよいかわからない人に特にオススメです。

 

もちろん、すでに読書が好きで、たくさんの本を日々読んでいる人にも役立ちます。

 

自分で本を買うと、著者やジャンルが偏ってしまうことがあります。100分de名著を購読することにより、毎月読むべき本を強制的に指定されるので、普段は触れない本に出会うことができます。偏りを少なくすることができるのです。

 

2022年1月は「金子みすゞ詩集」が題材でした。

 

一番はじめに紹介されている詩が「大漁」でした。

 

切手にもなっている大変有名な詩です。

 

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この「大漁」という詩ですが、どこがで見たことがあると引っ掛かりました。

 

実は東大入試で出題されているのです。

 

1985年の国語(第2問)で題材となっています。

 

この問題では、「大漁」と「積もった雪」が取り上げられています。

(「積もった雪」は100分de名著にも後ほど登場します)

 

東大の問題を引用します。

 

次の二つの詩は同じ作者の作品である。二つの詩に共通している作者の見方・感じ方について、各自の感想を160字以上200字以内で記せ。(句読点も一字として数える。)

 

積もった雪

 

上の雪

さむかろな。

つめたい月がさしていて。

 

下の雪

重かろな。

何百人ものせていて。

 

中の雪

さみしかろな。

空も地面のみえないで。

 

 

大漁

 

朝焼け小焼けだ

大漁だ

大羽鰯の

大漁だ

 

浜は祭りの

ようだけど

海のなかでは

何万の

鰯のとむらい

するだろう。

 

金子みすゞ全集」が発売されたのが、1984年2月です。

 

それ以前は「金子みすゞ」の名は世の中でほとんど知られていなかったようです。

 

1985年に入試問題として出題している東大はさすがです。

 

東大は世の中の流行を真っ先に入試問題に反映させる大学のひとつです。

 

このあたりの事情は、竹内康浩『東大入試至高の国語「第二問」』(朝日新聞出版)に詳しく書かれています。

 

この本は金子みすゞの話以外にも、非常に面白い話が書かれています。

 

興味がある人は読んでみてください。

(まだ絶版になっていないようですが、絶版になったら高値がつきそうな1冊です)

 

念のためですが、現在の東大入試の対策にはなりません…

趣味として読むタイプの本です。

 

 

 

 

 

過去の記事もご覧ください。

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