受験百景(予備校講師のブログ)

「受験」や「入試問題」に関係する話、日々の雑感を様々な視点から書きます。備忘録も兼ねていますので、くだらない話もあるかもしれません。

2021年共通テスト・世界史Bにジョージ・オーウェル『1984年』が登場

 

 

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2021年共通テスト 世界史Bの問題では、ジョージ・オーウェル1984年』が取り上げられました。

 

該当箇所を引用します。

 


世界史の授業で、イギリス人作家ジョージ=オーウェル(1903~1950年)の小説『1984年』を紹介し、討論をした。配付された資料と、生徒からの質問票とを次に示す。

 

作品の概要

 世界大戦中に実用化された核兵器は、再び核戦争を引き起こすこととなり、その結果、世界は「オセアニア」、「ユーラシア」及び「イースタシア」の3大国に再編された。「オセアニア」では、社会が国家によって統制され、双方向のテレビ装置や隠しマイクによって、市民は常に監視されている。

 「オセアニア」の真理省に努める主人公は、歴史記録を改ざんする仕事をしていた。文書や記録が改ざんされた結果、過去の歴史や「オセアニア」成立の過程についての自分の記憶と、公式の歴史とが一致しないことを、主人公は意識しながらも、何が正しい歴史であるのか分からない状態だった。

 主人公は古い新聞記事や禁書とされた著述を読むことによって、「オセアニア」の体制に疑問を抱くようになり、同じ考えを持つ同志とのつながりを持つようになった。ところが、主人公は密告によって逮捕され、愛情省で拷問を受けることになる。その結果、主人公は信念を打ち砕かれ、「オセアニア」を支配する「党」の思想を心から愛するようになる。

作家の経歴

 オーウェルは、1937年、トロツキーの影響を受けた組織の一員としてスペイン内戦に従軍した。この組織は、ソ連からの援助を受けた共産党と対立し、弾圧された。作者晩年の作品である『1984年』には、オーウェル自身の生きた時代についての政治的アイロニー(皮肉)や歴史観が反映されている。

 

(以下略)

 


 

 

 

非常によくまとめられた要約になっています。

 

センター試験や共通テストの地歴公民の問題文は読むだけでも勉強になります。

 

今回の共通テストの問題では、引用箇所の後で、18世紀の中国の朝廷が行った図書編纂事業について言及されています。この事業では、書籍の改ざんが組織的に行われ、その例として「四庫全書」が紹介されています。

 

日本でも近年、「森友学園」に関する文書改ざんが話題になりました。それを意識しての出題でしょうか。

 

 

 

ジョージ・オーウェルの『1984年』は、2007年一橋大の国語でも登場しています。

 

題材となった沼野充義『W文学の世紀へ』から該当箇所を引用します。

 


社会主義時代、ソ連ではイデオロギー的な支配体制のもとに、ジョージ・オーウェル流に「ニュースピーク」とも呼ぶべき全体主義の言語が幅をきかせ、ロシア語そのものを貧困にした。

(中略)

言葉の基本機能のことを、言語学者ヤコブソンは「交感機能」と呼んでいるが、これが失われたら、言葉は言葉でなくなってしまうと言っても過言ではないだろう。では、そのとき言葉は何になるのか。おそらく「言葉もどき」、オーウェルの表現を再び借りれば、新たな「ニュースピーク」ではないか。


 

 

この機会にジョージ・オーウェル1984年』を再読しようと思います。

 

合わせて、村上春樹1Q84も再読したいです。

 

 

 

 

 

過去にこんな記事も書きました。

jukenn.hatenablog.jp