同じ言葉に偶然出会う~「銀の弾丸」~
読書の楽しみの一つに「同じ言葉に偶然出会う」ということがあります。
使用頻度の高くない言葉に、違う本で出会うと「おっ!」という驚きを感じます。
最近、「銀の弾丸」という言葉に、2冊の本で出会いました。
1冊目は、ハワード・マークス『投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識』(日本経済新聞出版社)です。
株式投資における名著と言われています。
ある市場、あるいは個別銘柄や投資手法がしばらくの間、すばらしいリターンを生み出すと、たいていの場合、行き過ぎた(そして無条件の)信奉を集める。私はこうした流行の方策を「銀の弾丸」と呼んでいる。
投資家はつねに「銀の弾丸」を探し求めている。聖杯とかタダ飯とか、呼び方はいろいろあるだろうが、誰もがリスクなしでカネ持ちになるための切符を欲している。 それが存在しうるのか、存在するとしたら、なぜ自分たちの手に入りうるのか、と疑問に思う者はほとんどいない。要するに、希望の泉は永遠に枯れないのだ。
しかし、「銀の弾丸」は存在しない。リスクを負わずに高い収益率を達成できる戦略などない。万能な者もいない。それが人間なのだから。市場は激しく動くものであり、何よりも、長い 目で見ると並外れた利益をあげる機会を奪い去る働きをする。「銀の弾丸」がすぐそこにあるという揺るぎない思い込みは、やがて非常に深刻な打撃をもたらすのだ。
二〇〇二年五月三一日付 顧客向けレター「現実主義者の信条」より
2冊目は、水稀しま『名探偵コナン 緋色の弾丸』(小学館ジュニア文庫)です。
劇場版『名探偵コナン』シリーズの24作目で、2021年4月16日に公開された「名探偵コナン 緋色の弾丸」のノベライズ版です。
その頃。キャメルの車は東名高速道路の下りを走っていた。
「撃ったのはきっと、赤井さんです」
「え?」
キャメルの言葉に、ジョディは耳を疑った。
「でも、シュウはまだ名古屋にいるはずよ。リニアは今、山梨の手前……そんな距離、狙撃できるわけない」
「だから、赤井さんは特別な弾丸を作らせたんです。鉄製ではない、銀の弾丸を」
ジョディは驚いた。たしかに鉄製の弾だと、リニア軌道の磁石に吸いついてしまう危険がある。
キャメルは前方を見ながら、言葉を続けた。
「リニアの軌道の超電導磁石の影響を受けない、銀の弾丸。赤井さんはさらに火薬も調整し、弾の速度を拳銃並みの時速1000キロ程度にしています。よって、その弾丸が真空トンネルに入れば、後はそのスピードを保ったまま、一定の距離で同じ速度で走るリニアを追えます」
ジョディは頭の中で、銀の弾丸が真空トンネル内を突き抜けていくのをイメージした。隔壁を閉じた円筒形のチューブの中は真空近くに減圧され、弾丸は一直線のまま―。
「そのとき、もしリニアが急減速してその減速時間が長く続いたなら、その間に銀の弾丸はリニアの超軽量素材を貫きます。その際、車内のあらかじめ計算された位置に犯人の急所があれば、狙撃が可能です」
キャメルの声を聞きながら、ジョディは銀の弾丸がリニアの車両を次々と貫いて犯人に到達するのを頭に描いた。けれど、どれだけ優秀なスナイパーでも、走る列車に乗っている犯人をあらかじめ計算された位置に誘導するなんてことはできない。
「そのためには車内の協力者が必要……まさか、それが……」
「ええ」キャメルは小さくうなずいた。「きっとあの少年、江戸川コナン君です」
このように、「あの言葉がここで…!」という体験ができるのです。
今回取り上げた「銀の弾丸」は使用頻度の高くない単語なので、喜びも倍増です。
単語に着目する読書をしてみてはいかかでしょうか?
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