「村上春樹1Q84」と「2010年センター試験英語(本試)」
冒頭は
タクシーのラジオは、FM放送のクラシック音楽番組を流していた。曲はヤナーチェックの『シンフォニエッタ』。渋滞に巻き込まれたタクシーの中で聴くのにうってつけの音楽とは言えないはずだ。
(高校入試では冒頭から文学作品のタイトルや著者名を答えさせる問題があります。)
さて、この「1Q84」は章立てが次のようになっています。長くなるので「BOOK1」のみ掲載します。
第1章:青豆 見かけにだまされないように
第2章:天吾 ちょっとした別のアイデア
第3章:青豆 変更されたいくつかの事実
第4章:天吾 あなたがそれを望むのであれば
第5章:青豆 専門的な技能と訓練が必要とされる職業
第6章:天吾 我々はかなり遠くまで行くのだろうか?
第7章:青豆 蝶を起こさないようにとても静かに
第8章:天吾 知らないところに行って知らない誰かに会う
第9章:青豆 風景が変わり、ルールが変わった
第10章:天吾 本物の血が流れる実物の革命
第11章:青豆 肉体こそが人間にとって神殿である
第12章:天吾 あなたの王国が私たちにももたらされますように
第13章:青豆 生まれながらの被害者
第14章:天吾 ほとんど読者がこれまで目にしたことのないものごと
第15章:青豆 気球に碇をつけるみたいにしっかりと
第16章:天吾 気に入ってもらえてとても嬉しい
第17章:青豆 私たちが幸福になろうが不幸になろうが
第18章:天吾 もうビッグ・ブラザーの出てくる幕はない
第19章:青豆 秘密を分かち合う女たち
第20章:天吾 気の毒なギリヤーク人
第21章:青豆 どれほど遠いところに行こうと試みても
第22章:天吾 時間がいびつなかっちをとって進み得ること
第23章:青豆 これは何かの始まりに過ぎない
第24章:天吾 ここではない世界であることの意味はどこのあるのだろう
このように、主人公の「青豆雅美」と「川奈天吾」、それぞれの視点から同じ状況を説明していく構成になっています。BOOK3では「牛河利治」の視点も加わります。
「1Q84」を読みながら思い出したのが、「2010年センター試験英語(本試)」の第5問です。
次の文章は、同一の状況について二人の人物がそれぞれの観点から述べたものである。(以下省略)
これが問題の冒頭です。当時は新傾向とされていました。
「Witness A」と「Witness B」の2人の人物が、以下の図の状況をそれぞれの観点から述べた文章を読んで、問いに答えていく問題です。
センター試験の問題は約2年かけて作成される、というのは有名な話です。
「1Q84」は2009年5月29日に発売されました。とすると、2010年のセンター試験の問題作成者の中に「1Q84」を読んだ人がいる可能性があります。そして、「同一の状況を異なる人物が説明する」という新傾向の問題を出そうと考えたかもしれません。自分の知識や経験が問題作成に影響するのは避けられないはずなので。
逆に、先にセンター試験の問題が作成されていたとすれば、「1Q84」の構成を予想したことになり、これはこれですごいです。
何となくですが、センター試験はその時代に流行っていることを問題に取り入れようとしていると感じます。気のせいでしょうか。
次は、ジョージ・オーウェルの「1984年」を読もうと思います。