受験百景(予備校講師のブログ)

「受験」や「入試問題」に関係する話、日々の雑感を様々な視点から書きます。備忘録も兼ねていますので、くだらない話もあるかもしれません。

この本は絶対に読め!!【共通テスト 国語】

 

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日曜日の夜に次のニュースが話題となりました。

『入学共通テスト、問題作成委員らが例題集を出版 「疑念持たれる」と指摘受け複数辞任』

www.sankei.com

 

共通テスト(国語)の問題作成者が、対策問題集を発行していたという内容です。

一部、引用させていただきます。

 

問題となったのは、東京の大手教科書会社から昨年8月発行された共通テスト・国語記述式対策の市販本(定価2200円)で、教師や受験生向けに10の問題例と解答、解説、正答条件を掲載。記述式問題をめぐっては、正答条件が複雑なため自己採点が難しいとの批判があったが、そうした不備を補うような内容だ。

 

この問題集の正体は、幸田国広(編著)『新時代の大学入試 国語記述式問題への対応 10の問題例とその解説』(教育出版)です。

 

 

 早速、昨日この本を購入してきました。

 

まず、目次を紹介します。

 

 

第一章 大学入学共通テスト国語記述式問題とは何か

1 大学入試センター試験から大学入学共通テストへ

2 国語記述式問題の特徴

3 学習指導要領の改訂とどう関わるのか

 

第二章 国語記述式問題例

●第二章・第三章の読み方・使い方

●記述問題の留意点

●段階別の総合評価

●記述問題の評価について

問題例1  新聞社説の比較による精査・解釈

問題例2  旅程や会話からの判断・考えの形成

問題例3  多様な意見を踏まえた修正案の推論

問題例4  日本語の書字方向に関する複数の資料からの精査・解釈と考えの形成

問題例5  薬品の取扱説明書と事故報告書からの判断

問題例6  評論文と一般事例とを対照させた考えの整理

問題例7  複数の書評を踏まえた考えの形成

問題例8  少子化に関する資料の精査・解釈と考えの形成  

問題例9  生徒会討論を踏まえたルール変更の手続きについての判断

問題例10  著作権に関する論説と判決文による考えの形成

 

第三章 解答と解説 / 学びへの指針

問題例1  学びへの指針 共通点と相違点

問題例2  学びへの指針 情報の妥当性・信頼性を吟味する

問題例3  学びへの指針 ラベリングとレベリング

問題例4  学びへの指針 接続表現への着目

問題例5  学びへの指針 視覚化による思考(情報)の整理、思考 ツールの紹介(座標軸)

問題例6  学びへの指針 具体と抽象、上位概念と下位概念

問題例7  学びへの指針 「主張」と「論拠」、「根拠」と「理由づけ」

問題例8  学びへの指針 グラフや表における数値に関する語彙・表現への着目

問題例9  学びへの指針 話し合いの技法

問題例10  学びへの指針 引用、書き手の立場と背景

 

第四章 高校国語の授業はどう変わるのか

1  育成すべき資質・能力の明確化

2  国語科の授業改善のポイント

3 「論理国語」への接続 ー 主張と論拠 推論の仕方

4  年間指導計画とカリキュラム・マネジメント

 

第五章 初歩からの論理的思考トレーニン

1  論証の要件

2  論拠を明らかにする

3  推論の種類 

 

 

以上が目次です。これに加えて、「まえがき」と「あとがき」があります。

 

 

 

 

 

さて、大学入試センターは「令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針」を令和2年1月29日に発表しています。記述式問題の導入見送りによって一部変更が加えられたものです。

 

そこでは、国語の問題作成方針が次のように述べられています。

⾔語を⼿掛かりとしながら,⽂章から得られた情報を多⾯的・多⾓的な視点から解釈したり,⽬的や場⾯等に応じて⽂章を書いたりする⼒などを求める。近代以降の⽂章(論理的な⽂章,⽂学的な⽂章,実⽤的な⽂章),古典(古⽂,漢⽂)といった題材を対象とし,⾔語活動の過程を重視する。問題の作成に当たっては,⼤問ごとに⼀つの題材で問題を作成するだけでなく,異なる種類や分野の⽂章などを組み合わせた,複数の題材による問題を含めて検討する。

 

ポイントは「実⽤的な⽂章」「⼤問ごとに⼀つの題材で問題を作成するだけでなく,異なる種類や分野の⽂章などを組み合わせた,複数の題材による問題を含めて検討する。」という部分です。記述式問題は見送られましたが、「実用的な文章による問題」「複数の題材による問題」は見送られていないのです。世の中には、このタイプの問題の対策を正しく行うことができる問題集や参考書は存在しないと言って良いでしょう。なぜなら、過去問も存在せず、どのような問題が出題されるかが不明であるからです。現在書店に並んでいる共通テスト対策の本は、推測に基づいて作られたものに過ぎません。

 

ところが、今回のニュースで取り上げられた問題集はそうではありません。共通テストの問題作成者が作っていたのですから、本番に向けての対策としては非常に有効なものになります。出題にあたって、問題作成者しか知らない情報がたくさんあるでしょう。その情報が、直接的か、間接的かは分かりませんが、多少なりとも含まれているに違いありません。

 

記述式問題への対策を謳っている問題集ですが、内容のかなりの部分は「実用的な文章による問題」と「複数の題材による問題」の対策になっています。

 

この問題集で勉強した受験生が有利になることは確実です。

 

 

 

と思っていたところ、次のニュースが出てきました。

 

www.sankei.com

 

この記事の中で重要なのは、以下の部分ではないでしょうか。

センターは17日、例題集の中に来年実施される問題の内容を「類推できるような情報は記載されていない」とする見解を公表した。

 

「類推できるような情報は記載されていない」、この言葉自体が勉強のヒントになってしまいます。

 

なぜなら、大学入試センターのこの言葉を信じるのであれば、この問題集に記載されている情報とは無関係の内容が次の共通テストで出題されるからです。この問題集を研究すれば、何も情報がないよりは質の高い(?)予想問題や模擬試験を作れるでしょう。この問題集とは全く違う題材を使えばいいのです。

 

また、大学入試センターのこの言葉が嘘であれば、この問題集をやっていた受験生が有利になるでしょう。

 

どちらにせよ、この問題集を持つ者と持たざるもので大きな差がつきます。

 

また、この問題集を踏まえて指導をする先生のもとで学んだ生徒とそうでない生徒の間でも大きな差がつきます。

 

定価は2200円ですが、現在Amazonでは中古で5387円となっています。

この価格からも、経済格差が合否に影響するという現実を強く感じます。

 

ちなみに、ジュンク堂書店は、旭川店、弘前中三店、仙台TR店、 郡山店、岡島甲府店、新静岡店、名古屋店、明石店、高松店、大分店には、まだ少しだけ在庫があるようです。明日にはすべてなくなっているかもしれません。

 

私もこの本を読んで、研究してみようと思います。何か有益なことがあれば、できる限りこの場で共有していきたいです。

 

 

最後に、重要な情報であると思うので執筆者の所属と名前も書いておきます。何かに使えるかもしれませんので。

・薄井道正(立命館大学

・内田浩文(岡山県立勝山高等学校蒜山校地)

・寺田国広(早稲田大学

・後藤志緒莉(サレジオ工業高等専門学校

・田中洋美(椙山女学園高等学校

・本橋幸康(埼玉大学

・山下直(文教大学

・渡邉本樹(福井県教育庁

 

 

 

こんな記事も出ていました。参考にしてください。

biz-journal.jp

 

 

次回へ続く(?)

 

 

【追記】(2021年1月16日)

実際の共通テストでは、次の題材が出題されました。

jukenn.hatenablog.jp