PK戦 / 2019年 関西医科大(後期)
2019年 関西医科大(後期)数学 大問3の問題です。
時間がある人は答えを見る前に考えてみてください。
A,B の2 チームが対戦するある競技では,次のような方法でチームの勝ち負けを決定する。
競技の概要:
両チームにはそれぞれ5 人の競技者がおり,1 人ずつ交互に各々1 回ずつ試行を行い,それぞれ成功と失敗が決まる。A チームの競技者は奇数番目に,B チームの競技者は偶数番目に試行する。なお一人の競技者は1 回しか試行できない。
勝敗の決定:
成功した試行数の多いチームが勝ちチーム,少ないチームが負けチームとなる。なお,全員の試行が終了した時点で,成功した試行数が両チーム同数の場合は,引き分けとする。ただし,両チームすべての競技者の試行が失敗した場合も,引き分けとする。
特別事項:
ある試行が終了した時点で,それよりも後の試行の結果にかかわらず両チームの勝ち負けが確定する場合には,それよりも後の試行を行わない。
一人の競技者が試行に成功する確率をとするとき,以下の問に答えよ。
(1) 最も少ない試行数で勝ち負けが確定するのは,両チームあわせて何番目の競技者の試行が終了した時点かを答えよ。またそれが起こる確率を求めよ。
(2) 7 番目の競技者が試行を終了した時点で勝ち負けが確定する確率を求めよ。
(3) 9 番目の競技者が試行を終了した時点で勝ち負けが確定するときに,A チームが勝ちチームとなる条件付き確率を求めよ。
(4)引き分けとなる確率を求めよ。
それでは解き進めてみましょう。
簡単に言えば、「強さが同じAとBの2チームがサッカーのPK戦をするときの確率を考えてみてね!」ということです。
サッカーのPK戦を見るときに、どこに着目するでしょうか?
どの選手が入れたか、外したかも大切ですが、「その時点でどれだけ差がついているか」が最も大切な要素です。例えば、成功を「○」、失敗を「×」で表すとして、次のような途中経過になったとします。
A | ✕ | 〇 | 〇 | ✕ | |
B | 〇 | ✕ | 〇 | 〇 |
これを見て、Aが「2回」分だけ不利になっているなぁと感じるわけです。(最後でAが入れて、Bが外さないとAチームは負けてしまうわけです。)
PK戦の本質は得点の「差」なのです。
それを踏まえて、この問題を考えてみましょう。
Aがどれだけ有利になっているかという得点差をSとします。Aが成功したら「+1」、失敗したら「-1」を加え、Bが成功したら「-1」、失敗したら「+1」を加えることにします。もちろん、スタートの段階でSは0です。
上の例では、Sは2回目までで「-2」、4回目までで「0」、6回目までで「0」、8回目までで「-2」となっています。6回目終了の段階では両者互角ですが、8回目終了の段階ではBが有利になっているわけです。
各設問を考えてみます。
(1) 最も少ない試合数になるのは、「Aが成功し続けて、Bが失敗し続ける」もしくは「Aが失敗し続けて、Bが成功し続ける」のどちらかです。
A | 〇 | 〇 | 〇 | ||
B | ✕ | ✕ | ✕ |
このように6回目終了時点でAの勝利が確定します。Aが成功する確率が、Bが失敗する確率がなので、この確率はです。もちろんBの勝利が確定する場合も同様です。
答えは、となります。
(2)まずは具体例で考えてみましょう。7番目が終了した時点でAの勝ちが確定するのは、例えば、次のような場合です。
A | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
B | ✕ | ✕ | 〇 |
6回目までで、「+1」が5回、「-1」が1回が起きて、さらに7回目でAが成功するとAの勝ちが確定します。6回目までの『「+1」:5回、「-1」:1回』の起きる順番は関係なく、全部で通りあります。この確率はです。
Bの勝利が確定する場合も同様なので、答えは、となります。
(3) 9番目が終了した時点で勝ち負けが確定するということは、引き分けではないということです。この対戦ではAとBは同じ強さなので、Aが勝つ確率はです。
(4)引き分けとなるのは、10回目までで、「+1」が5回、「-1」が5回が起きるときなので、答えは、です。
以上のように、本質をつかむとあっという間に解けてしまいます。
PK戦を題材にした面白い問題でした。
〈参考〉
このような工夫をせずに、場合分けして解いていく解答は医学部進学予備校メビオが公開しています。こちらも参考にしてください。
https://www.mebio.co.jp/files/answer/2019/M_kanni_2019B.pdf