受験百景(予備校講師のブログ)

「受験」や「入試問題」に関係する話、日々の雑感を様々な視点から書きます。備忘録も兼ねていますので、くだらない話もあるかもしれません。

「大学への数学2020年5月号」を読んでの懐古(+これをやれば飛躍的に数学の実力が伸びるぞ)

 

受験雑誌「大学への数学」

 

 

 

「懐古」と「これをやれば飛躍的に数学の実力が伸びるぞ」という話です。 

 

受験雑誌『大学への数学』(東京出版)の2020年5月号に「コラム 数学の勉強法」という記事がありました。

 

思い当たる話があったので、まずはその部分を一部引用させていただきます。

 

以前,「日日の演習」(難易度は標準レベル以上)では,受験生の読者モニター数人に毎月の問題を解いてもらっていました.問題用紙は,誌面に載っているような体裁ではなく,ヒントになるようなことは一切排除しました.大学名はなし,問題の順番もバラバラ,難易度や目標時間もついていません.時間制限は設けませんでしたが,モニターの人たちは毎月,水準以上の問題に,ヒントも何もなくても,解けるまで食らいついていました.すると,秋口にはスーパー受験生と言ってもよいぐらい,数学は非常に出来るようになっていました.「数学が出来るようになるには,教えない(答えをみない)ことだ」と書くと逆説的ですが,自分なりにあれこれ試行錯誤することが基礎の確立を促し,その結果,実力が着いたのでしょう.

 

私も2010年にこの読者モニターをやらせてもらっていたので、この感覚が非常によく分かります。

 

毎月、該当単元の入試問題の切り貼りを渡され(15~20題程度)、解いていました。

 

難易度や出典(大学名)が書かれていないというのは実力アップに非常に有効であったと感じます。

 

大学への数学の難易度表記で)B~Dの問題がバラバラに入っているのですが、解き始める時点ではどの難易度なのか分かりません。もちろん出典からの推測もできません。

 

始めに難易度が分かっていると、使う解法や流れがおおよそ分かってしまいます。

 

例えば、「B」となっていれば、「あまりおかしなことは起きず、丁寧に計算していけば解ける」と思って解きます。「D」となっていれば、「問題文は単純だけど、細かいところに気を付けないといけないのか、典型的な解法だけでは完答できないな」と思って解きます。

 

もしくは「D」だから諦めよう、となってしまいます。

 

しかし、そういった事前情報がなければ、「解けるかも」とか「解いてやろう」と思って取り組みます。

 

当然、実力がついていないうちはあまり解けません。難易度は理にかなっていて、はじめは「B」レベルの問題ばかり解けて、解けなかった問題に限って「C」だったり「D」だったりします。

 

秋ぐらいになると、解ける問題が増えてきます。そして解けた問題の難易度を後で知ると「D」であることも起きてきます。

 

具体例を挙げます。次の問題を読んでください。解かなくてもいいです。暇な人は解いてみてください。

 

  


(1)  3^n=k^3+1をみたす正の整数の組 (k, n)をすべて求めよ.

(2)  3^n=k^2-40をみたす正の整数の組 (k, n)をすべて求めよ.


 

 

2010年の千葉大・医の問題です。『大学への数学』2010年11月号にあります。そんな古いの手に入らないよ、という人もいるでしょう。『ポケット日日の演習 ②数列・整数編』(東京出版)にも載っています。解答が気になる人は見てください。今は解答は大事ではありませんが。

 

 

 

 

この問題は不定方程式の典型問題に見えます。普通の問題かなと思って、手を付けます。

 

意外と苦戦します。苦戦しないで解けるのなら実力が高い証拠です。

 

解けそうなのに解けないな、と思いながら手を動かします。かなり時間をかけます。

 

当時は何時間もかかって(もちろん連続で考えているわけではなく、途中で数学以外の勉強をしたり、休憩したりする)、解けました。

 

この問題の難易度は「D」でした。

 

最初に、「この問題はCかDレベルの難問だよ」と言われていたら、おそらく途中でgive up して解ききれなかったことでしょう。

 

こうして、難しい問題を解けるようになっていきます。

 

事前情報を付与されない、答えをもらえないという状況は学力を伸ばすのに必須です。

 

実力が思うように伸びていかない受験生に限って、解答・解説が丁寧な問題集を好みます。学習の初期段階では良いかもしれませんが、最後までそれではいけません。

 

試験のときに初めて、答えを見ない勉強をやっても遅いのです。

 

「この1ヶ月は問題集の答えを見ない」というような勉強をすると、飛躍的に学力があがります。

 

赤本は解答が不親切という声もありますが、それでいいのです。不親切であれば自分の頭で考えます。それでも解決できなれば調べます。質問もします。

 

 

 

さて、この読者モニターを「ヒビモニ。」と呼ぶのですが、この制度は2014年を最後に廃止されてしまったようです。

 

読み手としては、「受験生がどのように解いたのか」「問題に対してどういう感想を持ったのか」などを誌面に載せていただけると、非常に参考になります。

 

ヒビモニ。の復活を望みます。

 

 

確率と確立

 

くだらない話です。

 

昔、模試の採点をしていました。

 

数学で、「確率」「確立」と間違って書いている答案にしばしば出会います。

 

気をつけましょう。

 

大人も間違えます。

 

広島都市学園大学も入学案内でそのミスをしています。

http://www.hcu.ac.jp/admission/admission03.html

 

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広島都市学園大学 入学案内より

 

「鉄緑会 東大数学問題集」を買うベストなタイミングは今かな(?)

 

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自宅保管用資料



 

鉄緑会 東大数学問題集」(KADOKAWAという問題集があります。

 

問題集と名乗っていますが、「資料集」といった方が正しいかもしれません。

 

東大の過去問(数学)について、ひたすら解説しているものです。

 

問題と解答が単に掲載されているわけではなく、「資料篇」として次のような内容も詳解されています。

 

・東大入試数学の出題形式

・この30年の出題の推移

・内容面の特徴

・総論

・東大入試における基本事項

・分野別出題傾向

・理系における易しい問題

・東大入試頻出分野分析 ー微分積分

・東大入試頻出分野分析 ー個数の処理・確率ー

・東大入試頻出分野分析 ー図形問題ー

・数学の答案の書き方

・問題別データ

 

受験生にも指導者にも非常に参考になる内容です。

 

この「資料篇」の他に、「問題篇」と「解答篇」があります。

 

年度順に掲載されています。解答は赤本とは比べものにならないくらい質が高いです。

 

 

 

 

 

さて、この「鉄緑会 東大数学問題集」ですが、実は2種類あります。

 

1つは、「鉄緑会東大数学問題集 資料・問題篇/解答篇 1980-2009〔30年分〕」です。

 

 

 

 

もう1つは、「2020年度用 鉄緑会東大数学問題集 資料・問題篇/解答篇 2010-2019」です。

 

 

 

 

2つ目の方は毎年更新されていて、近日「2021年度用 鉄緑会東大数学問題集 資料・問題篇/解答篇 2011-2020」が出版されるはずです。

 

一方で1つ目の方は更新されず、「1980年~2009年」の30年分で固定されています。

 

このことを踏まえると、今のうちにこの2冊を買っておくのが賢明な買い方です。

 

「1980年~2009年」と「2010年~2019年」で重複がなくきれいに繋がるからです。

 

新しいバージョンを買ってしまうと、「1980年~2009年」と「2011年~2020年」となり、2010年の分を見るためには古いものを新たに買う必要が出てきます。

 

東京大学の入試問題は改変され、他の大学の入試問題として繰り返し出題されることが多い。稀にではあるが、一言一句変わらずに出題されることもある程である。また、東京大学の入試問題を契機に、新しい高校数学の教育課程が導入されたこともあり、東京大学の入試問題は文字通り高校数学教育を牽引してきた。

 

とはしがきにあるように、東京大学の入試問題を研究しておくことは数学の指導者として必須です。

 

東京大学の入試問題について解説してある本は他にもいくつかありますが(いずれ紹介します)、「鉄緑会 東大数学問題集」は欠かせない1冊(2冊か?)です。

 

 

入試問題鑑賞「旅客運賃」

 

 

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 ※「入試問題鑑賞」では、解答を出すことではなく見た目を楽しむことに重点を置いて入試問題を紹介しています。

 

1966年 東京大学(前期 / 文理共通)数学 の問題です。(なんと54年前!)

  


ある鉄道の旅客運賃計算規則は下記のとおりであり,それによると,距離が319km,349kmのときの運賃は,それぞれ970円,1010円となる.下記の文中のa , bにあてはまる数を求めよ.ただし,a , bはともに0.1の整数倍の数である.

 

旅客運賃は,距離が300km以下の分に対しては1kmにつきa円,300kmを超過した分に対しては1kmにつきb円として計算し,その結果において,10円未満の端数は10円に切り上げるものとする. 

 


 

答えは a=3.1,b=1.6 です。

 

 

 

「旅客運賃」を題材にした珍しい問題です。

 

共通テストではこういう問題が増えてくるのか??

 

 

 

実際の旅客運賃はここまで単純ではないようです。

 

現実の旅客運賃計算規則に基づいてこの東大の問題を改題しようと思いましたが、複雑なようで、まだできていません。

 

まずは、運賃の計算規則を理解するところからなのですが、以下のwebサイトが詳しそうです。

 

www.desktoptetsu.com

 

この内容をもとに数学の問題を作ったら面白いものができそうです。

 

 

 

 

やさしいものとしては、大分県中津市立三光中学校での授業実践記録がありました。

 

www.shinko-keirin.co.jp

 

 

 

あまり知られていない情報ですが、啓林館の「授業実践記録」はとても参考になります。

 

この「授業実践記録」を題材にすると、良質な共通テストの予想問題を作ることができます。

 

1998年の記録から掲載していて、とても有益な情報源です。

 

www.shinko-keirin.co.jp

 

 

学校の授業の無意味さを文部科学省が認める

 

学校が長期的に休みになっている地域もありますが、休みになった分の授業はどうするのでしょうか。

 

文部科学省から1つの答えが提示されました。

 

www3.nhk.or.jp

 

 

 

家庭学習で学んだ内容について、学校側が小テストなどで定着していることが確認できれば、授業で扱わなくてもよいとする通知を特例として教育委員会などに出しました。」と記事にはあります。

 

つまり、家庭学習で学んでいて身についている内容は、学校の授業で扱わなくてもよいことになったのです。

 

「学校は小テストだけやっていればいい」という本質をついに文部科学省が認めてしまいました。

 

塾や予備校、もしくは独学で勉強をしていた方が学校の授業よりも効率的なのです。

 

この事実は文部科学省の人たちも知っているはずです。

 

なぜなら、文部科学省の偉い人たちは学校の授業をまともに聞いていなかった層の人たちだからです。

 

 

 

文部科学大臣萩生田光一氏の学歴は次のように公表されています。

・八王子市立ひよどり山中学校卒業

早稲田実業学校高等部卒業

明治大学商学部卒業

 

早稲田実業時代に二度の停学処分を受けています。それもあり、早稲田大学に内部進学できなかったようです。)

 

公立中学校の授業だけでは、高校受験で早稲田実業に合格するのは無理でしょう。おそらく学校の授業にとらわれずにかなりの勉強をしていたはずです。

 

早稲田実業時代には停学処分を受けているくらいなので、学校の授業を真面目に聞いていなかったと推定されます。

 

 

 

次に、文部科学省事務次官の藤原誠氏ですが、東大法学部出身です。この方に限らず、官僚は東大出身者が異様に多いです。

 

多少の地域差はありますが、学校の授業だけで東大に合格するのは難しいでしょう。文部科学省の官僚は、学校ではなく、塾や予備校で勉強していたという人が多いと想像できます。

 

 (今回は深入りしませんが、東大にたくさん輩出する進学校の多くでは、学校の授業を無視して勝手に勉強している生徒が多数を占めるようです。)

 

学校の授業がなくても、学校以外で勉強すればよいという経験を持っている人が多いはずです。

 

 

 

その人たちの見解が

「家庭学習で学んだ内容について、学校側が小テストなどで定着していることが確認できれば、授業で扱わなくてもよい」

なのです。

 

非常に納得できます。

 

 

駿台模試は実施!!(一部会場で中止)

 

 

先日、河合塾全統模試が中止されるという発表がありました。

 

jukenn.hatenablog.jp

 

 

 

もう一つの主要な模試である「駿台模試」について、本日(4月10日)に発表がありました。

 

5月3日(日)施行の駿台学力判定模試は実施されます。ただし、一部会場では中止されます。 

4月22日に公開会場での実施を中止すると発表されました。

 

中止される会場は以下の通りです。(赤字は4月14日に追加された会場)

【北海道】

駿台札幌校

宮城県

駿台仙台校

群馬県

・小野池學院

【栃木県】

宇都宮大学陽東キャンパス

【東京都】

駿台お茶の水2号館

駿台お茶の水3号館

駿台池袋校

駿台現役フロンティア自由が丘校

駿台現役フロンティア吉祥寺校

駿台立川校

駿台町田校

・医療ビジネス専門学校

【埼玉県】

駿台大宮校

【千葉県】

駿台柏校

駿台千葉校

駿台津田沼

【神奈川県】

駿台あざみ野校

駿台横浜校

駿台藤沢校

静岡県

駿台浜松校

【愛知県】

駿台名古屋校

京都府

駿台京都校

駿台京都南校

大阪府

駿台大阪校

駿台現役フロンティア茨木校

駿台大阪南校

駿台上本町校

兵庫県

駿台神戸校

広島県

駿台広島校

【福岡県】

駿台福岡校

 

 

また、以下の3つの模試は通常通り実施する予定となっています。

・第1回駿台全国模試(5月31日実施基準日)

・第1回高1駿台全国模試(6月14日実施基準日)

・第1回高2駿台全国模試(6月14日実施基準日)

 

 

 

上記の情報は以下のwebページで確認できます。

www2.sundai.ac.jp

 

 

 

 

 

駿台学力判定模試」の方は受験者の多い都市圏の会場が中止になっているので、受験者は相当少ないと予想されます。

 

一方で、「駿台全国模試」は予定通り通常実施されれば、受験者は例年より多いのではないでしょうか。同時期の河合塾の記述模試が中止になっているので、本来河合塾全統模試を受けようと考えていた受験生が、駿台全国模試を代わりに受験すると見込まれるからです。

 

とはいえ、大学別の冠模試ではないので、受験者数の大小はあまり大きな問題ではないでしょう。

 

 

 

入試問題鑑賞「折り紙を折ろう」

 

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※「入試問題鑑賞」では、解答を出すことではなく見た目を楽しむことに重点を置いて入試問題を紹介しています。 

 

 

2019年 静岡文化芸術大学デザイン学部(前期)数学 です。

  


1辺の長さが12である正方形の折り紙を,以下の手順に従って作業するとき,次の各問いに答えよ。

 

[手順]

① 折り紙の各頂点を反時計回りにA,B,C,Dとする。

② 線分AB,線分CDの中点を,それぞれM,Nとする。

③ △AMD,四角形MBND,△BCNを,それぞれ面P,面Q,面Rとする。

④ P⊥Q,R⊥Qとなるように,線分MD,線分BNで谷折りする。ただし,面Qに関して,点Aと点Cは同じ側にある。

⑤ 面Qをxy平面上におき,点Bを原点,線分BNをx軸上にとる。ただし,点Aのx座標,y座標,z座標は,すべて正になるようにする。

 

(1) 点Aから線分MDにおろした垂線の長さを求めよ。

(2)  \overrightarrow{\rm AC}を求めよ。

 

[留意事項]

※配付した折り紙は,書く,折る,破るなど自由に利用してよい。


 

折り紙を配付して、その場で考察させる意欲的な面白い出題です。

 

2021年度からの新入試を意識したのでしょうか。それとも「デザイン学部」だからでしょうか。

 

芸術系の大学は、全科目においてこういう問題をどんどん出して良いと思います。

 

試験会場で紙を配って考察させる問題は、記憶にある限り、2017年の東工大でも出題されています。