中止していた模試を受験できることに ― 全統模試「特別受験サービス」
全統模試の公開会場での中止が発表されていましたが、内容が変更され、受験できることになりました。
「特別受験サービス」として、自宅受験できるようです。
河合塾のwebページより、概要を引用します。
「特別受験サービス」とは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い公開会場で実施予定であった全統模試について、一般生を対象に新たに受験機会を提供するサービスです。
河合塾より、問題を皆さんのご自宅へお届けし、定められた実施日、時間割に沿って受験・答案を提出していただくことで、採点を行い、個人成績データを提供いたします。
対象となる模試は
・第1回全統共通テスト模試
・第1回全統記述模試
・第1回全統高1模試
・第1回全統高2模試
です。
日程の詳細は、以下のwebページでご確認ください。
実施することに変更したとはいえ、「自宅受験」です。
「自宅受験」のメリット・デメリットは過去の記事を参考にしてください。
昭和大学医学部、令和3年度入試より「国語」を導入
昭和大学より、令和3年度入試の変更点が発表されました。
全学部で、入学試験選択科目において国語を採用します。
国語を採用する理由と、変更点を昭和大学の発表資料から引用します。
入学試験選択科目における国語の採用について
国際化・情報社会の発展や価値観の多様化など、人々の生活環境がこれまでとは比較にならないほど急速に変化する中で、一人ひとりが物事を的確に判断できるような分析力や論理的思考力、創造力などを身に付けるとともに、豊かな感性・情緒を備え、幅広い知識と教養を持つことが極めて重要です。医系総合大学の本学には、「至誠一貫」の精神のもと医療従事者としての相応しい学力と資質を有する学生が男女を問わず活躍できるよう人材育成を行う使命があり、このために学力の 3 要素(「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」)を入学者選抜段階において多面的・総合的に評価いたします。その実現のため入試科目を再検討した結果、論理的思考力の適切な評価に「国語」を新たに入試科目(選択)として追加することといたしました。
■変更点
全学部で行う学校型推薦入試、一般選抜入試Ⅰ・Ⅱ期において、新たに国語が選択科目として採用され、数学若しくは国語どちらかを選択と致します。出題範囲等詳細につきましては、今後入試要項等で公表してまいりますのでご確認願います。
「数学と国語の選択になる」というところが受験生には大きな影響になるでしょう。
詳細は入試要項で公表するとのことですが、
・英語、数学、理科2科目
・英語、国語、理科2科目
のどちらのパターンで受験するのかを選べるということでしょう。
さて、この変更は医学部受験生の動向に大きく影響するのでしょうか?
おそらく、影響しないでしょう。
前提として、昭和大学だけを受験する人はほとんどいないでしょう。
医学部受験生は数多くの併願校を受けます。
10校前後は出願するでしょう。
現状、数学を使わずに受験できる私立医学部は、帝京大学のみです。
数学を捨てて、昭和大と帝京大のみを受験をするという選択肢が生まれますが、これを選ぶ人はほとんどいないでしょう。
2校しか受けられません。さらに、この2校は高得点勝負です。
国語よりも数学の方が満点(もしくはそれに匹敵する点数)を取りやすいです。
(昭和の国語は過去問がないので、はっきりとは言えませんが。)
医学部受験では、数学で無双できる受験生が圧倒的に合格を取ります。
英語が得意で逆転できた、という話はあまり聞きません。
英語はみんなできるのです。
数学で高得点を取ると周りに差をつけることができるのです。
まともな受験生は、数学を選択をするでしょう。過去問がたくさんあるので、対策もしやすいです。
国語で受験するのは、「昭和に受かれば大成功だ」という国語が得意な受験生だけでしょう。
上記の発表はこちらで確認することができます。
〈少し気になること〉
昭和大の発表は
「男女を問わず活躍できるように、学力の3要素を多面的・総合的に評価する。そのために国語を追加する。」
と読めますが、もしかして
「女子は国語が得意で数学が苦手だ。だから数学の代わりに国語を選択できるようにすれば、女子の合格者が増える。」
と考えているのかもしれません。
女子をたくさん合格させるために、得点調整などで国語の方が高得点を取りやすいとなれば、戦略は変わってくるでしょう。
この辺りはデータが集まるまで何も分かりません。
しばらくは数学を選択するのが無難でしょう。
昭和大学医学部に関しては、こんな記事も書いています。ぜひ読んでみてください。
【悲報】聖文新社、廃業
非常に悲しく、衝撃的なニュースです。
聖文新社が2020年7月末で廃業します。
聖文新社は「全国大学数学入試問題詳解シリーズ」で有名です。
「東京大学 数学入試問題50年(1956~2005)」などは、古い問題を見ることができる貴重な資料でした。
東京大学の他に、
・東北大学
・京都大学
・大阪大学
・九州大学
・一橋大学
・筑波大学
・千葉大学
・名古屋市立大学
・金沢大学
・神戸大学
・広島大学
について、30~50年分の入試問題集を発刊していました。
さらに、国公立大医学部に関しても、「北海道・東北」「首都圏」「中部圏」「近畿圏」の各地域について15年分の過去問集を作成していました。
これらは大変貴重な資料です。
また、入試問題を単元別に整理した「解法研究シリーズ」もあります。
・整数問題の解法研究
・場合の数・確率の解法研究
・空間幾何の解法研究
・論証問題の解法研究
・式と曲線の解法研究
「数学」で有名ですが、実は「英語」にも隠れた名著がたくさんあります。
例えば、中原道喜『誤訳の構造』『誤訳の典型』『誤訳の常識』は面白い本です。
Amazonを見ると、価格が高騰している本もありますが、まだ在庫があるものもいくつかあります。
聖文新社の本は、「買おうと思っていたが買っていなかった」というように、意外と後回しにしてしまいがちな気がします。
「誤植や誤答が目立つ」という欠点もありますが、貴重な資料を提供してくれる会社でした。
似たような資料集を出してくれる出版社はあるのでしょうか。。。
教学社や旺文社が有力な候補でしょうか。。。
(50年前の問題なんて興味ないよ、という人が多いのでしょうか。。。)
《参考》
聖文新社のwebページ
http://www.seibunshinsha.co.jp/index.html
数学について、いろいろ記事を書いています。良ければ、読んでみてください。
「句読法まで勉強してね」― 2020年藤田医科大・前期(英語)
2020年 藤田医科大学・前期(英語) の問題です。
次の空所に入れるのに最も適当なものを(1)~(4)から1つ選び、その番号をマークしなさい。
Mechanical energy can be classified into two types( )kinetic energy and potential energy.
(1) .
(2) ,
(3) :
(4) ;
非常に珍しい出題です。選択肢が面白い。
「句読法」をテーマにした問題です。本棚の文法書を開くと、例えば受験生がよく使っている『ロイヤル英文法』(旺文社)に解説があります。
まずは、それぞれの選択肢を順に見ていきます。(今回は『ロイヤル英文法』の記述を参考にさせていただきます)
(1)は「終止符」と呼ばれる記号です。次のような使い方ができます。
・平叙文、命令文の文末につける。
・丁寧な依頼を表す文で、疑問符の代わりにつける。
・略語につける。(例:October=Oct.)
(2)は「コンマ」と呼ばれる記号です。次のような使い方ができます。
・重文の等位接続詞の前につける。
・二つ以上の語句が並ぶときの区切りにつける。
・同格語句や挿入語句の前後につける。
・従位節が前に出たときに、その節の区切りにつける。
・直接話法の引用部分の区切りにつける。
・非制限用法の関係詞節の前につける。
・付加疑問の前につける。
・文頭の文修飾副詞の次や、分詞構文の区切りにつける。
・文脈から容易にわかる語句を省略したときにつける。
・Yes、Noや感嘆語のあと、呼びかけなどの前か後につける。
・手紙やe-mailの書き出しと結びにつける。
・意味の混乱を避けるためにつける。
・数の1000などの単位を区切るのにつける。
・日付や住所につける。
(3)は「コロン」と呼ばれる記号です。次のような使い方ができます。
・具体的な例示の前に「すなわち」の意味で用いる。
・ある節とそれに続く説明的な節の間に置く。
・引用や対話の内容を示す。
・正式な手紙やe-mailの冒頭の敬辞のあとにつける。
・〈as follows〉などの次につける。
・時刻の区切りにつける。
(4)は「セミコロン」と呼ばれる記号です。次のような使い方ができます。
・2つの文を等位接続詞を用いないで結ぶときにつける。
・接続副詞を用いて結ぶときにつける。
・混乱を防ぐため、コンマよりも大きな区切りであることを示す。
これらの知識を踏まえると、この藤田医科大の問題の答えは、(3)のコロンです。
具体的な例示の前に「すなわち」の意味で用いる、という用法に当てはまります。
two types の具体例が kinetic energy and potential energy だということです。
問題文の意味は、
「力学的エネルギーは2つの種類のエネルギー(運動エネルギーと位置エネルギー)に分けることができる。」
となります。
「受験生はここまで勉強しておいてね」という大学からのメッセージでしょうか。
東京女子医科大学の偏差値は下がるか(?)
東京女子医科大学が、6月から対面授業を再開する準備を進めています。
さらに、学生約1000人にPCR検査を受けさせ、陰性者のみを登校させる対応をするようです。
この判断に批判が集まっています。
東京女子医大「全員PCRで授業再開」に学生反発 「検査の必要あるか」「感染不安」...嘆願書も(J-CAST)
上記の記事では学生や保護者の声が紹介されています。一部引用させていただきます。
「地元ではコロナ患者・疑いの人に対し厳しい印象を持つ人が多い。感染者が多い東京に一度でも行ってしまうと、かなり長い間地元に帰れなくなってしまう懸念があり心配である」
「県外から通っており、高齢者と同居する私としては感染リスクを限りなく少なくしたいです。現在感染リスクが高い東京に向かうことが大変不安です」
「どう努力しても3密を避けられない状況で、たった1回の『感度は低く特異度が高い』検査をするメリットと、無症状の陽性者や偽陰性者と濃厚接触するデメリットを考えて頂きたい」
「検査キットそのものだけでなく、検査をされる先生方や検査技師の方々の労力や時間など、貴重な医療リソースは本当に必要としていらっしゃる方のために使うべきではないですか。意味や必要がない検査は患者への負荷も考えて行うべきではないと授業で何度も習ってきました」
「たしかにオンライン授業は今までの対面授業より質は低いですが、慣れてもきたのでコロナが落ち着くまではオンライン授業の方が学生としては安全です。学校は大学病院の敷地内にあるので、信頼して通院や入院をしてくださっている患者さんのためにもなると思います」
「臨床実習があって病院に行かないと単位が取れない5、6年生は、PCR検査を必須にするのは仕方ないとは思います。といっても無症状で、偽陽性・偽陰性の可能性を考えると、受ける必要性をあまり感じないというのが5年生たちの意見です」
「なぜ焦って6月から開始するのか理由が知りたいです。わざわざマスクとゴーグルとフェイスシールドを着けてまで授業に臨まないといけないのか。そこまでしてやりたいのはなぜなのか。ここまで強硬的にやられてしまうと裏があるのかと考えてしまいます。たとえば、学費返還といった動きが出るのが嫌だからとか、PCR検査の結果をもとに教授が論文でも書きたいのかなどです。そういう風に色々と考えてしまいます」
「地方の学生が一日だけ東京に行って検査をして帰ってくることがもし地元でばれてしまったら、自粛警察ではないですけど、周囲に非難されるとか、東京に行ったためにコロナに感染したらそれも非難される。親が開業医の学生も多くて、(院内感染が広がったら)病院の経営に影響します。それを懸念する保護者も多いです」
「あとは検査代、交通費代も自己負担ですし、今はバイトも一切禁止で処分の対象なので、その中で強制的に支出させるのは疑問が残ります」
「学生たちはあくまで学びたいということには変わりはないです。きちんと情報を共有してくだされば、ここまで反発は起きなかったと思います。大学には今後、情報開示を強く求めます」
これらの中で、「学費返還」を嫌うというのは大きな判断材料の1つかもしれません。
東京女子医科大学は「大学再生計画」を掲げ、外部評価委員会も設置しています。
これは、2014年2月に東京女子医科大学病院で起きた医療事故をきっかけとして、内部の教員などの不満が社会に表出したことを受けて、作成されたものです。
その中には「財務改善」という項目があります。
平成26年からの赤字を、平成29年には黒字に転換させたと報告書にはあります。
東京女子医科大学の赤字は有名な話で、様々なところで取り上げられています。
もちろん、「学費」だけが問題ではないと思います。
平成31年で「再生計画」は終了しているようですが、今も学内では多くの問題があり、職員や教員の不満が溜まってると推測されます。
学生の声にあるように、「情報開示」をしないというのが東京女子医科大学の特徴です。
以前も記事にしましたが、2020年度入試で出題ミスをしているにも関わらず、問題すら公開せず、「不適切ではない」と結論付けているような学校です。(いまだに今年度の入試問題を公開していません!)
東京女子医科大学はこのように、数多くの問題を抱えている学校です。
今年も悪い評判が流れることになってしまいました。
入試の難易度は落ちるのでしょうか(?)
医学部受験生にとっては、穴場になるでしょう(?)
模試の自宅受験にメリットはあるのか?
公開会場での実施を中止した模試を「自宅受験」に切り替える動きがあります。
そこで、模試を自宅受験することのメリット・デメリットを率直に考えていきます。
そもそも模試を受けることのメリットとして、どのようなことがあるのかをいくつか列挙してみます。思いついた順に書いていくので、似たようなものが並ぶかもしれません。
・偏差値を見て、自分の学力を把握することができる。
・志望校の中での順位を知ることができる。
・各科目の中で何が苦手なのかが分かる。
・時間制限や緊張がある中でのアウトプットの練習になる。
・模試の問題は良問が多いので、復習することで実力向上につながる。
・記述の解答を第三者に採点してもらえて、どこで減点されるかが分かる。
・東大模試などの冠模試(大学別の模試)は本番の予行練習になる。
・成績優秀者に載ることを目指すなど、モチベーションの維持になる。
・成績が良いと図書カードがもらえたり、特待生になったりする。
こんなところでしょうか?
「自宅受験」になると、この中のいくつかがなくなることになります。
・偏差値を見て、自分の学力を把握することができる。
・志望校の中での順位を知ることができる。
・各科目の中で何が苦手なのかが分かる。
・時間制限や緊張がある中でのアウトプットの練習になる。
・模試の問題は良問が多いので、復習することで実力向上につながる。
・記述の解答を第三者に採点してもらえて、どこで減点されるかが分かる。
・東大模試などの冠模試(大学別の模試)は本番の予行練習になる。
・成績優秀者に載ることを目指すなど、モチベーションの維持になる。
・成績が良いと図書カードがもらえたり、特待生になったりする。
容易に想像できますが、「自宅受験」では不正をする受験生は出てきます。
・時間制限を無視する。
・参考書や問題集で調べながら解答する。
・友達と協力して解く。
・事前に解答を入手して、それを写す。
このような行為をして、高得点を目指すのです。
人数にもよりますが、データが不正確になってしまいます。
また、不正行為をしていなくても、緊張感がない中で解くと、本当の点数とはズレが生じてしまいます。
このような理由で、偏差値や順位、合格可能性の判定などは、例年に比べて「参考程度に」と言わざるを得ません。
一方で、しっかりと取り組めば
・各科目の中で何が苦手なのかが分かる。
・模試の問題は良問が多いので、復習することで実力向上につながる。
・記述の解答を第三者に採点してもらえて、どこで減点されるかが分かる。
のように、他の受験生が影響しない部分では有意義に活用することができます。
春や夏の時期には、「実力判断」よりも「実力向上」に模試を使うことが大切なので、そういった意味では、自宅受験でも影響は小さいでしょう。
模試の結果に一喜一憂することしかできないような受験生は、例年以上に淘汰されることになります。
受験の形態によらず、「どうすれば目の前の教材を自分の力に変換することができるのか」を考え抜いた受験生が合格を勝ち取れるのです。
〈これ以降はあまり大事ではありませんが…〉
・成績が良いと図書カードがもらえたり、特待生になったりする。
という項目についても考えておきます。
これについては情報が入ってこないので、どうなるのか分かりません。
仮に自宅受験した模試の成績で特待生になれるのであれば、全力で不正をする人も出てくるでしょう。場合によっては、何十万円も得することができます。
(自分が受験生だったら、はじめにきちんと解答したうえで、それをコピーして残してく。その後で、解答を入手する、参考書で調べるなどして、提出する答案は高得点を取れるようにすると思います。これは「偽計業務妨害」になるのでしょうか…)
佐藤大八郎の方程式 ― 2019年藤田医科大学・推薦
2019年 藤田医科大(推薦)で以下の問題が出題されていました。
のとき連立方程式\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
x^3 = y^4 \\
x^y = y^x
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}の解は,である.
という方程式は佐藤大八郎という数学者が研究しました。
今回は、この藤田医科大の解答の代わりに、次の問題の解答を考えてみます。
を満たす有理数 をすべて求めよ.
解答は次のようになります。
の両辺を 乗して
両辺を で割って
とおく. より すなわち である.また, は有理数である.
両辺を 乗して
が有理数となるような を求める.
を互いに素である自然数として, とおく.
とおくと, と が互いに素であるから と も互いに素である.
よって,①が有理数になる条件は,分子 と分母 がともに整数の 乗になることであり, を を満たす整数として
とおける.
となり、 を②とおく。
と仮定すると,②は 個の自然数の和であり, であるから, である. であるから,これは左辺が であることに矛盾する.
よって, であり,このとき
したがって, を任意の自然数として
(解答おわり)
この類題が1991年東大・後期と2015年名古屋大に出題されているので、メモしておきます。
(1) 省略
(2) 省略
(3) を満たす正の有理数は,3以外に存在しないことを示せ.
(1) 省略
(2) 省略
(3) 方程式 の解で有理数であるものをすべて求めよ.